美しいもの

個展を9月に控え、今年織った作品の全体像を改めて見直しています。
tsutaeでは主に残糸を使用しているため、いわゆる既製品のような整った形ではない作品があります。
糸番手も違えば、縮絨率も違う。もともとは巻物を織るために作られた糸ではないものも多いと感じますが、そんな残糸たちでも、僕の心に触れる光を放つ存在がいます。そんな糸を一本一本セレクトし、作品として織り上げる。質感や色合い、表情など、織る糸を決める要因は様々ですが、一貫してあるのは、美しいものを織りたいという気持ちです。
そうして、織りながら常に考えることは、人の暮らしと共にあるものでありたい、ということ。
僕の生み出した布たちは、人の暮らしを、日々繰り返す日常を豊かにするものになっているだろうか。

織り上げた作品を見つめながら、時にゆがみ、波打つ布から、美しい存在とはなんなのだろうか、を考えます。
ただただ整ったものを織りたいのなら、紡績工場さんとのやりとりを重ねればいいでしょう。
でも、僕が織りたい美しいものには、人の意思が見えるということが不可欠です。
大量生産では埋もれしまうようなほんの小さな発想や、理由の見つからない一瞬の閃きや感情、考えに考えた結果それでも思う通りにいかなかった時に現れる導きのような表情、、、すべてが大きな意思の元にないまぜになったものが織りたい。
一枚一枚のストールという木が集まって、個展という森が生まれるような、そこでひとつの姿勢を表すような、そんな場を織物たちと作りたい。

ものづくりをしていると、自然からヒントを得ることがとても多い。
そして、表現すればするほど自然にはかなわないことを知る。
でもそもそも自然とは、競う相手ではないんだったな。

美しい文章はなかなか書けないのだけれど、
美しいものを織りたいと思っています。